成約価格と募集価格はなぜ違う? — 相場データの種類と使い分け
公開: 2026-07-04(コトミラボ 編集)
「ポータルサイトで見る相場」と「実際に売れた価格」は、しばしば数%〜1割以上ずれます。 どちらが間違っているわけでもなく、測っているものが違うのが理由です。 不動産の価格データの全体像を整理します。
価格データの体系 — 大きく3系統
| 系統 | 何の価格か | 代表例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 募集(売出)価格 | 売主の希望価格 | 不動産ポータルの掲載価格 | 最も速報性が高いが、成約前の希望値 |
| 成約価格 | 実際に成立した価格 | 国交省 不動産取引価格情報、レインズ成約事例 | 実勢そのものだが、公表に遅れがある |
| 評価額 | 行政・鑑定による評価 | 地価公示・都道府県地価調査、相続税路線価、固定資産税評価額 | 毎年定点で比較可能。取引そのものではない |
評価額系は互いに水準の目安が決まっており、相続税路線価は地価公示価格の 8割程度、固定資産税評価額は7割程度を目途に評価されています。逆算すると 「路線価÷0.8」でその土地の公示水準のあたりがつく、という実務的な使い方もあります。
募集価格が高めに見える2つの理由
- 値引き交渉の前の価格だから。売出価格は交渉の出発点で、 成約までに価格が下がることが珍しくありません。売出開始から時間が経った物件ほど 値下げを経ている可能性が高くなります。
- 売れ残りが長く表示されるから(生存バイアス)。適正価格の物件は すぐ売れて掲載から消え、強気の価格の物件ほど長く残ります。ポータルを眺めて感じる 「体感相場」は、この効果で実勢より高めに偏りがちです。
乖離の大きさは市況で変わります。上昇局面では強気の売出でも追いつくように売れて 乖離が縮み、調整局面では売出価格が下がりきらず乖離が開く傾向があります。 つまり売出と成約の乖離幅そのものが、市況の温度計にもなります。
成約価格データはどこで見られるか
① 国土交通省「不動産取引価格情報」(当サイトの元データ)。 取引当事者へのアンケートと不動産登記の異動情報をもとに、四半期ごとに公表されます。 個別の取引が特定されないよう、所在は地区名まで・価格や面積は丸めた形での公開です。 実際の取引から公表までおおむね半年程度の遅れがあります。
② レインズ(REINS)。不動産会社間の物件情報ネットワークで、 仲介成約の事例が蓄積されています。詳細は会員(不動産会社)向けですが、 「レインズ・マーケット・インフォメーション」で中古マンション・戸建ての 成約動向の概況は誰でも見られます。
当サイトは①を市区町村×年で集計し、中央㎡単価の推移と 面積帯別の成約総額として掲載しています。「今この瞬間の売出価格」では なく「実際に成立した取引水準の推移」を見るためのデータです。
実務での使い分け
- 買う側: 成約ベースの水準で相場観を作り、ポータルの売出価格は 「交渉前の上限の分布」として眺める。気になる物件の売出価格が成約水準から 大きく浮いていないかを確認する、という順番が実態に合います。
- 売る側: 成約水準とのギャップを理解した上で売出価格を設計する。 高すぎる初値は「売れ残り→値下げ履歴つき物件」になりやすく、かえって 成約価格を下げることがある、というのは仲介実務でよく指摘される点です。 実際の値付けは物件条件の影響が大きいため、複数社の査定で個別に確認してください。
- 調べる側: 時系列の水準比較は成約データ(当サイト・取引価格情報)、 定点の地点比較は地価公示・路線価、直近の出物の肌感はポータル、と 目的で使い分けるのが効率的です。
市区町村ごとの成約水準はトップページの検索から、 全国の水準比較は㎡単価・坪単価ランキングからどうぞ。 坪単価と㎡単価の換算はこちらの解説にまとめています。